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ひねりのある脚本とありきたりでない着地点|ゴーン・ガール|評価|感想

デビット・フィンチャー監督作品、ゴーン・ガール

とても感想が書きにくい映画だ。ストーリーのネタバレにならないつもりで書いたとしても、登場人物の行動に言及してしまうと、それがネタバレに繋がってしまう。

フィンチャー作品の特徴

巧みな構成と脚本

デヴィット・フィンチャー作品はミステリーが多く、毎回オチを楽しみに観ている。設定や脚本が複雑で、伏線が張り巡らされている。共通して描かれているのは、人間心理の奥。主人公はみな追い詰められ、自分の意志に反して踏み出していかなければならない。

ノワール調の映像

寒々しい映像演出と、派手さを排した音楽。映像に暖かみがなく、ピリピリとした空気が伝わってくる。陰鬱であり美しくもある映像美、冒頭から数分で登場人物や背景を飲み込む前に、映画世界に引き込まれる。

ゴーン・ガールのキャストたち

ベン・アフレック

役作りでそうしたのか、随分太っていた。だらしないの一歩手前の中年太りで、昔の洗練されたイメージからはかけ離れている。私は『カンパニー・メン』の彼の演技が好きで、今回のキャラクター設定も職を失っている点が共通していたので、違和感なく受け入れられた。演技にあくがなく、男性は投影しやすいかもしれない。

ロザムンド・パイク

失踪した妻を演じていました。彼女の演技がこの映画の骨です。複雑な人物を見事に演じています。演じていることを忘れてしまって、主人公目線でだめな主人公に共感していく。ジョー・ライト監督の『プライドと偏見』で彼女の演技を観ていましたが、そのときは脇ということもあり、あまり印象に残っていませんでした。ゴーン・ガールでは完全にベン・アフレックよりも印象に残ります。

目に焼き付くクライマックス

デヴィット・フィンチャーです。目を反らしたくなるシーンもあります。そこよりも、その後に来るクライマックスシーンとロザムンド・パイクの演技、ベン・アフレックの短く囁く台詞。インパクトがありすぎて、記憶に残りました。すごいシーンだ。口当たりがよいものだけが、記憶に残るんじゃない。苦いものだって強烈に残る。映画の終結も苦いもので、すっきりしないが、それがありきたりでなく、実にリアルだと思いました。観ていただいた人にしか理解しにくい感想となりましたが、まだ観られていない方は、ひとりで観てください。

☆☆☆☆★