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社会はユーモアに満ちた知的なサスペンス|マネーモンスター|評価|感想

社会風刺もあり、笑いもあり、知的で展開予測が難しい

こういう役をやらせたら、ピカイチ

主人公役のジョージ・クルーニーは番組司会者。口が達者で相手を丸め込む話術にたけた役柄。ウィットにとんだセリフを吐かせると、ジョージ・クルーニーの魅力が爆発する。この映画のキャラクターはどこか欠点も抱え、それをチャーミングに描いている。ジュリア・ロバーツ演じるディレクターや、プロデューサー、カメラマンみなが個性的でキャラがいきている。冒頭から目まぐるしい、番組準備から進行、放送までのシーンで一気に状況とキャラクターの説明が見事に表現され、飽きさせない。

ノンストップ映画

おそらく、映画の上映時間と劇中の進行時間が極めてリアルタイム進行な映画。放送局の一幕ですべてを終える。非常に巧みなシナリオだ。ラストまでにしっかり、テーマもストーリーもキャラクターもすべてを伝えきり、大団円となる。重なるが冒頭の状況説明は見事だった。

知的でところどこと笑わせる

実に知的な映画だ。それを小難しく見せず、実はとても深いテーマを持っている。重いものをエンターテイメントのベールで覆い、そっと観客の心理に染み込ませていく。緊迫感のある密室劇として中盤まで展開する。その間、適度に笑わせ、観客に息抜きの間を設け、非常にバランスよく、展開させていく。全編のストーリーは立てこもりもので、大まかな筋は読めるのだが、巧みに伏線が張られ、後半一気に展開していく。この伏線にはキャラクター造形にも貼られている。大筋にかかわらない細かなエピソードにおいては、シニカルな笑いがあり、王道を歩ませようとし、土壇場でひっくり返す。いわゆるハリウッド的展開を皮肉るつくりで、それがまた高いセンスを感じさせる。

ジョディー・フォスターのセンスに脱帽

何よりも、監督のセンスが絶妙。長くハリウッドで活躍しながら、王道をうまく外し、外しながらもエンターテイメント性を決して損なわない。重くなりがちな社会風刺を軽く見せ、軽い調子ながらも、軽すぎずテーマを外さない。とにかくバランスが絶妙だ。実に知的で大人のエンターテイメント映画と言える。難しく重いテーマだって、エンターテイメントの皮を巧みにとりいれれば、敷居が高く難解と毛嫌いされず、観客により容易に理解させることができる。職人芸を見た。

☆☆☆☆★