10分で楽しめる文化系WEBマガジン MIN CAFE

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四季を切り取る日本映画|海街diary|評価|感想

リアルとフィクションの間に位置する是枝監督

日本映画には四季がある

ドキュメンタリー出身ということで、その匂いがどの映画にも出ている。海街diaryにおいても、日常感が大切にされている。日本は四季のある国で、日本の映画には四季を取り入れて映画を作ることができる。にも関わらず、邦画で四季を丁寧に切り取っている映画の割合は少ない気がする。この海街dialyでは日本映画らしい四季を背景に日常を敷き、物語を敷いている。

脚本には書けない演出

人間て何かを考えたり思ったりするとき、わざわざ座禅を組んだり、特別な場所でやらない。洗濯物をたたんでいるとき、ご飯を作っているとき、日常の動作の中でふと思う。もちろん、頭のなかで思っていて、言葉には出さない。それを映画で表現するのはとても難しい。是枝監督はそれを小道具や役者に言葉にさせるのではなく、すっと高級なハサミで柔い生地を切るように、切り取る。役者の演技力なのか佇まいや空気感なのか、作られた感を出さずに自然に見せる。これって、ものすごいことなんだと思う。

ニューフェイス広瀬すず

大ブレイク中の彼女。出演シーンだけをつなげると広瀬すずPVが完成するだろう。男性監督だからの画が、ぽろぽろ見えて、きっともっと画を撮っていたんだろうけど、切ったんだろうなぁと想像してしまう。ところどころ、作られたものがかいま見えるのだけれど、それを許せてしまうキュート差が彼女にはあった。同性ももう許してしまうんじゃないだろうか。そんなに出演経験もないだろうに、下手感はなく、末恐ろしい女優さんだ。

新旧女優たちの演技

確かな経験のある女優さんたちがオンパレード。最近、朝にやっているあるドラマの脇役女性の演技を見ていて、しんどい気持ちになった。詳しくは知らないけれど、舞台出身の方なのだろう。日常ではそんな抑揚はつけないし、圧のある演技で見ていられなかった。海街diaryの女優さんたちの映画は、圧が全くなくて自然と入ってくる。これもすさまじいことなんだと思う。アクションやサスペンス、ホラーなど物語や演技に動きがつく映画よりも、こういった日常的な人間劇のほうが、ずっとずっと演じる力が必要なんあろうなとつくづく感じた映画だった。

☆☆☆★★