10分で楽しめる文化系WEBマガジン MIN CAFE

ひとりカフェ中に、10分で楽しめる本や映画、エッセイ、カフェ系ブログ。映画は洋画中心、カフェは関西中心、ときに考えさせてくれるエッセイをエッセンスに。文化系の読者様大歓迎です。

役割が家族を作る|キッズ・オールライト|感想|評価

家族設定が風変わりな物語。行き詰まっていく関係に風穴が空いたが……

設定が面白い。けれど、結局はノーマルな家族が起こすであろう問題と同じ問題を持っている。お互い思い合いながらも、本心をさらけ出さずに歳月が過ぎ、不満と不安が澱のように積もっている。子供たちと血のつながりはあるけれど家族とは言えない男と接点ができ、危うくも保たれていたバランスが崩れていく。次第に本心を顕わにしていく。殺伐として家族関係は崩れていこうとするが……。

父性のない家族

登場する家族は、レズビアンカップルが精子提供を受け、お互いに子供をもうけています。女の子と男の子ひとりずつ。母親が二人いて父親がいない家族という複雑な設定です。母親二人、どちらが父親役をやっているふうではなく、かといって母親なのかともいえず、役割が曖昧に見える。

男は平和を乱すのか

子供は父性を求めても、女たちは男としか見ない。異物が家族のなかに関わりをもった途端、家族はそれぞれ抑えていたものを噴き出していき、本心を知っていく。改めて人間関係て危ういのだと考えさせられた。それぞれの役割を自然に演じてバランスをとった関係も、新たな人物が入ってきて、その人物の役割に刺激を受け、今まで役割を演じられなくなってしまう。みなが新たな役割を演じ新たなバランスがとれればいいのだけれど、そうならないときは崩れてしまう。人間関係も絶妙な配役で、良くも悪くもなる。映画の善し悪しと似ているのかもしれない。

☆☆★★★